最近のオススメ(記事へは左のリストからどうぞ)

2010/07/27

「イン・ザ・プール」@奥田英朗

「イン・ザ・プール」@奥田英朗 (2006/3刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。プール依存症、陰茎強直症、妄想癖…訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。こいつは利口か、馬鹿か?名医か、ヤブ医者か。


【一言抜き出すなら】
-----

【感想】
 同じ神経科医を訪れる、様々なタイプの患者たち。その一人ひとりをクローズアップしていく連作短編…でしたけれど。

…おもしろくない。

 もともと短編はあまり好きじゃない。
 表面だけさらっと書いて、皮肉って、結局その人がどうなったのか、どうしてそうなったのかよく分からなくて。
 一場面だけ切り取って、鋭利に怖がらせて、「人ごとじゃない」ような気にさせて、うまいぐあいに調理して。

 小説の技巧や設定が重視されて、あんまり登場人物への愛を感じないからかな。

 この批判が、この作品に対してなのか、この奥田さんに対してなのか、短編という形式に対してなのかはよく分からないけれど。

 ちょっとばかし表紙に期待してしまって、がっかりしてしまって、でも連作でパターン違いの表紙で次が出ているから、もう1冊くらい読んでみようかと思ったり。1冊だけで悪口言いっぱなしなのも申し訳ないし。

この1冊の中では、「コンパニオン」が印象的。っていうか、どれも客観的な意見が差し挟まれないまま進むので、感情移入しちゃうと自分も精神科行き的感覚を持ってるってことのような気がして、批判しながら読まないと正常じゃないような気がしてきて疲れちゃったよ。


(40点。レギュラー登場の精神科医も好きになれない。)






応援お願いします!
人気ブログランキングへ

2010/07/26

「海を抱く -BAD KIDS-」@村山由佳

「海を抱く –BAD KIDS-」@村山由佳 (2003/9刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
超高校級サーファーであり誰とでも寝る軽いやつと風評のある光秀。一方、まじめで成績優秀、校内随一の優等生の恵理。接点のほとんどない二人がある出来事をきっかけに性的な関係をもつようになる。それは互いの欲望を満たすだけの関わり、のはずだった。それぞれが内に抱える厳しい現実と悩み、それは体を重ねることで癒されていくのか。真摯に生きようとする18歳の心と体を描く青春長編小説。


【一言抜き出すなら】
言うつもりもないのに口から出たんなら、それこそ本心ってことじゃない

【感想】
 村山さんの昔の小説って優しい。
 懐かしい学生時代の恋愛を、それも登場人物たちにしてみれば等身大のどろどろでいやらしくて汚いお話を、けれどちょっと上から見下ろして、「綺麗な思い出」の一つになるように書いてる。ああ、大変なことがあったけれど、でもこの子たちは、トラウマになったりしないでまっすぐ進んでくだろうな、っていう感じ。
 なので、「ダブルファンタジー」では大泣きしちゃったけど、(そしてそれから村山さんにはまっているわけだけれど)通勤の電車の中でも心穏やかに読める。どこがどうなっていくのかは勿論気になるし、あっ!!て思って昔を思い出すようなシーンもあるけれど、ちゃんと「懐かしい」として処理できる。

 上に抜き出した、「言うつもりもないのに口から出たんなら、それこそ本心ってことじゃない」の一言も、今でもついついそうるがやらかしていまう、子供特有の部分で、直していかないといかないなって思う。
 本心っていうのは誰もが持っている。
 そしてそれを口から出すと、傷つくかもしれない人がいる。
 でも伝えたい、どうしても分かってほしい時に、時と場所を選んで、できるだけ傷つかないように、相手がまっすぐ受け止められるように、最善のお膳立てをする努力を行なわないといけない。
 それを怠ってしまった時。
 何にも通じなくなってしまう。本音は本当の事だから、正しくていつでも許されるってわけじゃない。

(85点。もう一冊の姉妹本も読みたいな。)




応援お願いします!
人気ブログランキングへ

「REVERSE」@石田衣良

「REVERSE」@石田衣良 (2007/8刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
ネットで出会い、心を通わせた男と女。しかしふたりは、自分の性別を偽っていた―一度送ったメールは二度ともとにもどせない。やり直しがきかない、人生のように。石田衣良。リバース。リアルな性を超えた新しい恋のかたち。ありえないことじゃない。


【一言抜き出すなら】
友情に乾杯

【感想】
 久しぶりの石田さんです。そうるが一番好きなのは「娼年」ですが、なんだかんだ石田さんの描く恋愛は、愛情とか劣情とかではなく綺麗な「恋」だな、という感じがするので、号泣したり投げ捨てたくなったりはせず、憧れの少女マンガみたいに読めます。「いいなーこんな恋!」って感じ。
 
 さって、女の人と男の人がそれぞれ自分の性別を嘘ついてメル友になり、どんどん仲良くなって、どうしても直接会いたくなっちゃったどうしよう、という話です。
 別に出会い系で知り合ったわけでもなんでもなく、あくまで「友人」としてメールをやり取りしているのだから性別にこだわるのはナンセンスなのかもしれない。でもどうしても、メールを書く時、送る時に相手を恋愛対象として見てしまっている自分がいる。

 性別ってなんだろう、友情と愛情ってなんだろう。

 そんな話です。自分の彼氏とか男友達とか別れた彼氏とか仲の良い女友達との、関係性と性差をちょっと考えてしまいました。そうるは、男女の友情は成立すると思うけれど、でもそれはやっぱり同性の友情とは別の形をしていると思います。

 そんな中で、主人公の女性(男と偽ってメールしている人)が、別れた彼氏と乾杯するシーンがあります。「友情に乾杯」って。
 終わった愛情は友情になる。同性との関係も友情になる。じゃあ、メールの先に居る人との関係はなんだろう。
 性別にうだうだ悩んで、メールの先に居る人に抱く気持ちが何なのか真剣に悩んで、初心な恋に頭をフル回転させているくせに、その合間に元彼とは笑って待ち合わせして「友情に乾杯」できるんだから、今の東京の恋愛事情はぐちゃぐちゃだなぁって思う。それが、なんとなくリアルだと思うんだから尚更だ。
 

(85点。愛するより恋する方が難しいのかな、やっぱり。)




応援お願いします!
人気ブログランキングへ

「ネフェルティティの微笑」@栗本薫

「ネフェルティティの微笑」@栗本薫 (1986/3刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
失恋の痛手から、ふらりと訪れたエジプトで出会った、謎の日本女性・小笠原那智。妖艶にして気高いその雰囲気は、古代エジプト史第一の美女として名高きネフェルティティその姿であった。愛され、崇められ、恐れられた“遠くから来た美しい人”ネフェルティティ。彼女の前に屈した時から、男たらは、己の野望に酔いしれ、そして死への道へと堕ちてゆくのだ―。灼けたエジプトの地平に描かれた、巧妙なトリックと華麗な愛の織りなす壮大なるミステリー・ロマンここに登場。


【一言抜き出すなら】
自由

【感想】
 栗本さん2作目。20年以上前の作品です。
 そうの個人的趣味としては、前回読んだ「天の陽炎」よりこっちの方がオススメ。ミステリ的なストーリーがしっかりしていて読みやすいし、起承転結があるので、うだうだと悩んでいる暇もなくどんどんとストーリーは進む。

なにより、謎の美女として描かれている那智が実際何を考えているのか、それは最後まで本人の口からは語られないし、あくまで周囲の人間の想定でしかないというところがかっこいい!!

謎めいていて美しくて、でもミステリアスで何考えているか分からない女性は、おいそれとストーリーの分かりやすさなんかのために誰かに自分の内面を語ったりしないのですよ!
心情表現がリアルで感情移入しちゃうのも感動しますが、こうやってちょっとばかり分かりやすい技巧を凝らされると、「ああ楽しく書いたんだなあ」と思って読んでいて楽しくなっちゃいます。

(85点。ライトノベルみたいな疾走感!)




__⇒同じ作家の別の本
・「天の陽炎」@栗本薫


応援お願いします!
人気ブログランキングへ

「天の陽炎」@栗本薫

「天の陽炎」@栗本薫 (2007/2刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
華族たちがゴシップで世間を賑わせている大正時代。女学校を出たばかりの真珠子はその美貌を見初められ、綾瀬成祐子爵と結婚した。だが、夫は彼女を着せ替え人形のようにしか扱わない。そんな彼女の前に、大陸浪人の天童壮介が現れる。天童は綾瀬から金を騙し取り、大陸での成功を企んでいた。彼の思惑を知りつつも、真珠子は天童の語る大陸への思いに惹かれていく。そして姑の死をきっかけに、彼女の運命が大きく動きだす。


【一言抜き出すなら】
もう、止めましたの。なにもかも。

【感想】
 世界で一番長い小説、グイン・サーが。栗本さんの書いたこの小説に惚れ込んで新刊を毎回楽しみにしていたのですが、なにしろもうお亡くなりになってしまったことですし、天地がひっくり返ろうが奇跡が起ころうが、グインの続きが出版されることは金輪際ないわけで。

あまりに寂しくなってしまったので、グイン以外の栗本さんの著作をほとんど読んでいないことも思いだし、ちょっと図書館から借りてきました。

…栗本さんって、何書いても変わらないんだなと。まあ第一印象ですけど。
ぐぢぐぢ悩んで、悩むだけで前に進めなくて、いやだいやだと思いつつ、結局1歩も前に進めていなくて。
そんな、読んでいる此方側がイライラしてしまう登場人物の心理描写が巧みで、「お前もういいから考えずにいけよ!!」と何度も叫びたくなりました。

でもふと読み終わってみると、そうやってぐぢぐぢ悩んで結局なにもしないってことが自分にもあるから、自己嫌悪と相まってイライラしてしまったんだろうな、と思ったり。

只うろうろとその場で悩むだけの人の話って、本当につまらないんだな、と実感。
グイン・サーガも途中なんっかいもびっくりするほど長くうだうだと悩んでいたりもしていましたが、全体のストーリーが長すぎて、あまり比率として気にならなかったんだな、と気付きました。1巻だけの話でうだうだされるとはっきり言ってうざい(笑)
(60点。つまらん! 作品としての完成度云々ではなく。)



この本面白そうかなって思った方★
応援お願いします!

人気ブログランキングへ

2010/07/14

「笑わない数学者」@森博嗣

「笑わない数学者」@森博嗣 (1997/7刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
偉大な数学者、天王寺翔蔵博士の住む「三ツ星館」。そこで開かれたパーティの席上、博士は庭にある大きなオリオン像を消してみせた。一夜あけて、再びオリオン像が現れた時、2つの死体が発見され…。犀川助教授と西之園萌絵の理系師弟コンビが館の謎と殺人事件の真相を探る。超絶の森ミステリィ第3弾。


【一言抜き出すなら】
負け方を考えることは、気の利いたジョークを思い付くよりも、はるかに難しいものだ。

【感想】
 森さんらしさ、を知るならベストな1冊なのでは、と思います。

 物語をひっぱる犀川助教授と西之園さんの人間らしさがすごく丁寧に書かれてるし、
謎も適度に難しく(あくまでミステリビギナーなそうるの感覚ですが)、
また、他の殺されたり殺したり怯えたりする人たちも皆それなりに一風変わっていて、
とてもおもしろく読めました。

  そうるは、森さんなら「スカイ・クロラ」と「四季」に惚れ込んでいるのでどうしてもそれに匹敵するドキドキ感は無いのですが、でも通じるものはあるし(この雰囲気―!!って感じる箇所があるととても嬉しくなります)、どれも外すことなく面白いのでついつい手に取ってしまいます。

 しかし、「名探偵コナン」を読んでいても思ったのですが、どうしてこう連作のミステリモノって、レギュラー人物(この作品なら犀川助教授と西之園さん、コナンなら新一とコナンと蘭ちゃん)の人間関係に全く進展がないんですかね…
 これがお決まりだって分かっているんですけど、ついついじれったくなっちゃいます。

(80点。贔屓点モリモリ。)




この本面白そうって思った方★
応援お願いします!

人気ブログランキングへ

2010/07/12

「余命1ヵ月の花嫁」 @TBSテレビ報道局

「余命1ヵ月の花嫁」 @TBSテレビ報道局 (2009/3刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
イベントコンパニオンをしていた長島千恵さんは23歳だった2005年の秋、左胸にしこりがあるのを発見、乳がんとの診断をうけた。ちょうどそのころ赤須太郎さんから交際を申し込まれ、悩みに悩んだが「一緒にがんと闘おう」という言葉に動かされ、交際がスタートした。しかし、がんの進行は止まらず、翌年7月に乳房切除の手術をせざるをえなくなる。それでも治ると信じ、SEの資格を取り再就職し、次第に病気のことは忘れていった。ところが、2007年3月、激しい咳と鋭い胸の痛みに襲われ、主治医の元に。胸膜、肺、骨にがんが転移していたのが判明。そんな千恵さんのある願いを叶えようと、太郎さんと友人たちは…。最後まで人を愛し、人に愛され、人を支え、人に支えられた24年の人生を生き抜いた長島千恵さんからのラスト・メッセージ。


【一言抜き出すなら】
生きてる。

【感想】
 泣きました。
 最近とことん、女性の「生きるとは」的な話に弱いです。
 「これをしたい!」とか、「私の人生これをやるんだ!」って決意した女性が、選んだもの、その為に捨てたものの話を読むと泣いてしまいます。

 …多感な年頃なのかな。
第二青春期とか。

 「千恵さん、いつも病室で何をしているんですか?」
 って何気なく聞いた彼氏に、ずばっと千恵さんの、上記抜き出した一言。
 切実過ぎて、一生懸命すぎて、はっとさせられて、何も考えられなくなってしまいました。

 のんびりした時間がたくさんあって、考える時間がたくさんあって、パソコンがあれば世界とつながっていられて…
なんて、「入院」すら、のんきに捉えていました。(そうるは入院したことないです)

もう一つ、印象的な言葉。
 「みなさんに明日がくることは奇跡です。
   それを知っているだけで、日常は幸せなことだらけで溢れています。」


(88点。ノンフィクションに泣かされるってなんか悔しいので)




この本面白そうって思った方★
応援お願いします!

人気ブログランキングへ

「「世界征服」は可能か?」 @岡田斗司夫

こんにちは、そうるです。
同期の友達に借りて、久しぶりに新書を読みました。

「「世界征服」は可能か?」 @岡田斗司夫 (2007/6刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
アニメや漫画にひんぱんに登場する「世界征服」。だが、いったい「世界征服」とは何か。あなたが支配者になったらどのタイプになる?このさい徹底的に考えてみよう。


【一言抜き出すなら】
世界征服した後、何をするか?

【感想】
 こういう、一見ばかげたタイトルの新書は、軽い気持ちで読める上、懐かしいアニメ・漫画の画像も出てきて(レッドリボン軍のボスが出てきたよ! @ドラゴンボール)とても楽しみました。
 本当に真面目に「世界征服」をするとしたら、 必要なこと って何なのか。

 それを突き詰めて考えたら「世界を征服しようとする組織」を運営するための話になってしまって、なんだか気付いたら組織運営のハウツー本だったりして。

 悪の組織っていうのは理念も道徳も背徳的だし、週休2日は望めないし、ある程度大きくないと「世界を征服しようとしている」実感も得られない。
だから、こんなダメダメな組織で働いてくれる従業員たちは大事にしなきゃいけないよ、と書いてあって、従業員を大事にする悪の組織って想像つかないけど、そういう矛盾を改めて纏めて考えることで、今自分が籍を置いている組織についてもなんとなく考えてしまったりしてして、こんな「悪の組織に関する本」でも実用書なんだな、と思いました。

抜き出した言葉は、「世界征服は夢のための手段であって、目的ではない」という意味の面白い言葉。
世界を征服でもしないと叶えられない願い …ってなんだろ。

 (82点!  新書の割に楽しかったです)



この本面白そうかなって思った方★
応援お願いします!

人気ブログランキングへ

2010/07/06

「すべての雲は銀の…」(下)@村山由佳

こんにちは、そうるです。
昼になりまして、あと今日の間にすることが何にもなくなってしまった…と思います。
はやく有給消化に入りたい。それが終わったら、新しい会社で楽しく働くんだ!(たぶん)

「すべての雲は銀の…」(下) @村山由佳 (2004/4刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
宿を整え、厨房を手伝い、動物の世話をする。訪れるのは不登校の少女や寂しい老人、夢を追う花屋の娘たち…。人々との出会い、自然と格闘する日々が、少しずつ祐介を変えていく。一方、瞳子は夫の消息を追ってエジプトへ。もう一度誰かを愛せる日は来るのだろうか―。壊れかけた心にやさしく降りつもる物語。


【一言抜き出すなら】
私が幸せかどうかは、私だけが知っていればいいこと

【感想】
「ダブル・ファンタジー」には及ばなかったな…
 というのがまず感想です。
 まあ、2004年刊の本作を、5年後発刊の「ダブル・ファンタジー」と比べることがナンセンスなんですけど。
でも、この作家さんが5年後に「ダブル・ファンタジー」を書くのだと思うと、そうるとしての「好み!」はあくまで今の村山由佳なので、これからこの人が何をどういう風に書いてきたのか、合間を縫うように読んでいきたいです。
高校生くらいの時は、ごてごての恋愛小説を書く人、として村山由佳を毛嫌い(読まず嫌い)していたのですが、今この人の小説に感情移入出来ちゃうってことは、そうるの恋愛方面がちゃんと全うに成長してきたってことになるんですかね(笑)

ストーリーとしては、「落ち着くべき場所」に落ち着きすぎたかな、と思うところが少し。最近ミステリばっかり読んでいたので、最後にどんでん返しがなくてつまらなく感じちゃったのかもしれません。
綺麗すぎるくらい綺麗に纏まってる感じ。

ただ、最後に突然、主人公の祐介が「今のままじゃ嫌だ、今の中途半端なまま安穏としている自分にあと1秒も我慢できない。自己嫌悪で叫びだしたくなる」といったような意味の一文があり、これまでずっと逃避してきた安全な場所から一気に飛び出そうとするシーンがあるのですが、この瞬間、この心理、何がトリガ―なのか自分でも明確には言えないのだけれど、でも本当にイキナリ駆けだしたくなるこの心理の描写が、「私もこんな時あったな」とすごくたくさんのことを思い出しました。
そうして飛び出したことで、そうるはこれまでたくさんの人に迷惑を掛けてきたし呆れられもしたし悲しませたりもしてきたのですが、でもそうるは「我慢できなかった」自分、その先の「不確かな違う場所」に進むことを決めた私を誰より自分で認めたいと思っています。こういう自分が好きとか嫌いではなく、「ある日突然飛び出しがちな人」だと認めて、飛び出した先にあるものが良かろうと悪かろうとちゃんと責任もって受け止めていこう、前だけ見ていこう、と思います。飛び出してしまったものを後からぐちぐち言ってくさくさすることほどかっこ悪いことはない、とも思いますし。

まあこんな風にそうるは考えてるんですが、「ダブル・ファンタジー」を読んだ人なら(おい、影響受けすぎだよ!)って思ってると思います。
それだけ、私にとってあの主人公の奈津はかっこよかったんです。正にこういう風に考えて生きていきたい!!って感じでした。

でも、青春の一幕としては本作の祐介もとてもかっこよく、親近感が持てました。夢物語ではないけど、ありえる思い出としての綺麗さがあるかな、と。畑や温泉、動物たちの描写と併せて、すごく綺麗で懐かしい雰囲気がしました。

90点!(恋愛って素敵だなぁ)



この本面白そうかなって思った方★
応援お願いします!

人気ブログランキングへ

__⇒同じ作家の別の本
 ・「すべての雲は銀の…」(上)@村山由佳
 ・「W/F ダブルファンタジー」@村山由佳

「すべての雲は銀の…」(上)@村山由佳

おはようございます、そうるです。
今日、鞄に文庫本入れてくるの忘れました。。。精力的にいろいろと読もうと思っていた矢先のことなので少なからずショックです。ちぇ。

というわけで、週末と月曜日で一気に読んでしまったのがこちら。

「すべての雲は銀の…」(上) @村山由佳 (2004/4刊)


【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
恋人由美子の心変わりの相手が兄貴でさえなかったら、ここまで苦しくはなかったのかもしれない。傷心の祐介は、大学生活から逃れるように、信州菅平の宿「かむなび」で働き始める。頑固だが一本筋の通った園主、子連れでワケありの瞳子…。たくましく働く明るさの奥に、誰もが言い知れぬ傷みを抱えていた。

【一言抜き出すなら】
冷たい足先を、奴のひざの間に差し入れて

【感想】
大学生の失恋、というありがちな挫折。恋人を盗られたのが兄だというのはちょっと珍しいけれど、でも20歳そこそこの時に、一番感情の振れ幅が大きくなるのはやっぱり恋愛なのかな、と思いました。
 登場人物はどれもできすぎているくらい「人間らしい」感じがしましたが、でもそのキャラクター達がごくごく自然に動き、話しているので(台詞回しはものすごく上手いと思いました)違和感、というものは殆ど感じなかったです。
 エピソードはどれもちょっとばかり「できすぎた」感じがしたのですが、年が近い所為か、一言抜き出した「冷たい足先を相手の膝の間に差し入れて眠る」元彼女の癖、というのが印象に残りました。
上手くいっているカップルには、きっと似たようなちょっとしたお決まりの仕草があって、別れた時にはその仕草が思い出される度にやりきれない気持がはちきれそうになって…と思いつつ読んでいたら、主人公に感情移入してしまいました。

 …88点! (下巻に期待大です)



この本面白そうかなって思った方★応援お願いします!人気ブログランキングへ

__⇒同じ作家の別の本
 ・「W/F ダブルファンタジー」@村山由佳

2010/07/05

「迷宮遡行」@貫井徳郎

こんにちは、そうるです。
7月に入って丁度読む本がなくなったので、この週末は図書館に行ってきました。
けれどなかなか読みたい本がなくて(借りられていて)、地元の田舎と違って都会の図書館は争奪戦が激しい、とほとほと実感しました。
だって、文庫じゃなくてハードカバーでも、楽しみにしていた本(しかも全然新しくない)がなかったりしまして…
しかたなく、知ってる作家さんで、まあまあ外れなさそうなのを借りてきた次第です。(冒険心ゼロ)

というわけで。
「迷宮遡行」@貫井徳郎  (2000/10刊)


【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
平凡な日常が裂ける―。突然、愛する妻・絢子が失踪した。置き手紙ひとつを残して。理由が分からない。失業中の迫水は、途切れそうな手がかりをたどり、妻の行方を追う。彼の前に立ちふさがる、暴力団組員。妻はどうして、姿を消したのか?いや、そもそも妻は何者だったのか?絡み合う糸が、闇の迷宮をかたちづくる。『烙印』をもとに書き下ろされた、本格ミステリーの最新傑作。

【一言抜き出すなら】
お前の我が儘は今に始まったことじゃない。この一件が片づいたら絶交してやるから安心しろ。

【感想】
我が儘だけじゃなくて、情けない上に他人任せで職も金もなんにも無い。
そんな主人公が、妻を取り戻すために死地に赴くと話した時の親友の一言。
どうしょうもない主人公だけど、それでも周りに見捨てられたわけじゃない。
この文句はかっこいいけれど、でも、できれば言いたくも言われたくもない微妙な一言。

お話の方は、上手くできているな、と思ったし最後まで続きが気になって仕方がなかったのだけれど、難を言うとすれば。
…主人公の魅力が無さすぎる。
失踪した奥さんのことがとても好きなのは認めるけれど、それ以外に何も持っていなさすぎ。お金も職も無いし、他力本願だし行動の全てが運を天に任せるような行き当たりばったり。

こんな性格があまりに情けなさ過ぎてお話に「作り話感」が増してしまい、入り込めませんでした。貫井さん自身はとても好きな作家なので、デビューに近い作とはいえ、ちょっと残念な感じです。

…80点。(贔屓点込み)



この本面白そうかなって思った方★
応援お願いします!

人気ブログランキングへ

__⇒同じ作家の別の本
 ・「慟哭」@貫井徳郎
 ・「プリズム」@貫井徳郎 
 ・「失踪症候群」@貫井徳郎

2010/07/02

2010年6月のベストワン

6月に読んだ10冊は、全てお母さんが「お勧め!」って言って貸してくれたものでした。
貸してもらって手元にあるものだからついそればかり読んでいましたが、本来のそうるの好きな作家さんはもうちょっと違ったりします。

なので、7月からは図書館を活用して、ずっと読みたかった本なんかを借りてきたいな、と思ってます。ハードカバーでもめげずに電車の中で読むぞ!

☆★2010年6月のベストワン!★☆

「ルームメイト」@今邑彩


初めて読んだ人でしたが、そうるの好きな「青春」と「多重人格」をうまく絡めて話を展開してました。多重人格とか難病とか未来人とか、なんでもいいんですけど、絶対に感情移入できないだろう!!っていうくらい私と縁の無い設定の登場人物の心理描写がリアルで共感できちゃうと、「おもしろい」と感じます。

この作品も、登場する多重人格の子が切なくて感動しました…

85点!(ちょっと点数でも付け出してみようかなと)


この本面白そうかなって思った方★
応援お願いします!

人気ブログランキングへ

「ある閉ざされた雪の山荘で」@東野圭吾

こんにちは、そうるです。やっと明日から週末ですね。。。ディズニーランドに行こう、と考えているので、雨が降らないことを願うばかりです。この時期にディズニーランドに行く理想としては、雨の予報だから入場者が少なくて、でもノリで行ってみたら案外あんまり降らなくて楽しめた、というのがいいなーと思ってます。でもとっても楽しみ!! 2年ぶりくらいかなー…社会人になってからは初だな!

さて、そんなことを思いながら、現在「未読」棚に入っている最後の東野圭吾を読み終わりました。
と言っても、ちょこちょこ感想が追い付いていないので、思い出しつつ近日中にはアップしたいなと思っているのですが。

「ある閉ざされた雪の山荘で」@東野圭吾


【あらすじ】(アマゾンより)
早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した若き男女七名。これから雪に閉ざされ孤立した山荘での殺人劇が始まる。一人また一人と消えていく現実は芝居なのか。一度限りの大技が読者を直撃。

【一言抜き出すなら】
迫真の演技に、私は完全に騙された。

【感想】
 一つの所に複数人の男女が閉じこめられ、外界との接触を断たれている中で次々と人が殺されていくストーリー。
 「古典」と銘打たれるミステリーを読んだことがある人なら、誰でも「ああ」と思い付くような所謂「本格」モノ。
 東野圭吾が、その「本格」を目指し(もしくは意識し)、且つその中に「東野圭吾らしさ」を取り入れた結果として出来たこの作品は、純粋に「小説を楽しむ」ことができると思います。

 登場人物の誰かに感情移入して、泣いてしまうわけじゃ無い。
 自分の人生が変わってしまうほど、感動する名文句に出会えるわけじゃ無い。

 でも、「展開が読めない」とか、「本当に殺人は起きているのか」とか、「犯人は誰だ」とか、「どうやって殺したんだ」とか、分からないことばかりで、意図的に東野圭吾に情報操作されている中で、読み進むにつれて色々な方向に騙されて、真実を隠されて、でも少しづつヒントを与えられて。そうやって「小説を読んでいく」こと、「結末で大どんでん返しに驚く」ことの楽しさを、鮮やかに与えてくれる作品でした。
 
 ほんと、続きが気になって仕方なかった。

 「演劇」が作品のキーワードになっていて、その所為で、「人がいなくなっている」という現実の状況が、「殺された」ものなのか、「舞台上の設定で殺されただけでいなくなっただけ」なのかがまず分からない。「殺された」なら大変なことだけど、「いなくなった」だけなら騒ぎたてるのはまずい。

 設定に凝りすぎてストーリー性が欠けていたり、話が破綻してしまいそうな小説はたまに見かけますが(アマチュアにありがちなことなのかもしれませんが)、この作品はそんなことはなく、作者もこの「新しい試み」で「何が本当なのか分からない」トリックを楽しみながら書いたんだろうな、ということが伝わってきます。

 何回も前に言っていますが、東野圭吾はプロの「小説家」で、文章で人を楽しませる「エンターティナー」だ、とまたしてもしみじみ思った話でした。



この本面白そうかなって思った方★
応援お願いします!

人気ブログランキングへ


- - - ⇒同じ作家の別の本
「時生」@東野圭吾
「使命と魂のリミット」@東野圭吾
「赤い指」@東野圭吾
「天使の耳」@東野圭吾
「ウインクで乾杯」@東野圭吾
「さまよう刃」@東野圭吾
「11文字の殺人」@東野圭吾
「秘密」@東野圭吾