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2010/06/10

「ボトルネック」@米澤 穂信

こんばんわ、そうるです。
やっぱり、読み終わった後記憶で書くより、直後に本を手元に置いて書く方がしっくりきます。


「ボトルネック」@米澤 穂信



【あらすじ】(アマゾンより)
亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した…はずだった。ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔。

【一言抜き出すなら】
羨ましいんだよ

【感想】
「羨ましい」という言葉が、こんなに切実な言葉だったとは思いませんでした。

「こうなれたらいいのに」「ああなりたかったのに」と思う理想、そしてそれを体現している「羨ましい」という感情は、誰でも誰か(親戚や友達、芸能人)に対して持つものだろうと思います。

でも本当にもこんなに、「この人になりたい」と思う感情、羨ましいという思いを、そうるはこの本で初めて知りました。

「自分がいない世界」を夢想したことは何人もいると思います。
でも、「自分の代わりに誰かがいる世界」を考えたことのある人は少ないんじぉないだろうか。

主人公は、偶然、自分が生まれる前に流産してしまった姉がいた。
たから、「自分がいない世界」=「姉が生まれ、自分が生まれなかった世界」というやや一般的でない夢想と理論が成り立ち、そして本当に、「自分の代わりに姉がいる世界」に飛んでしまった。



こんなに壊滅的に、こっぴどく、完全なまでに、「自分はいない方がよい人間である」ことを思い知らされる人は、たとえ物語の中の人であってもいないと思う。そうるは初めて見た。


彼が死にたいと言っても、生きたくないと言っても、私は止められない。


過去は変えられない。可能性を実際に比較することはできない。
自分は、自分のいない世界を見ることができない。
未来に何が起こるのか、分からない。

それは、どれだけ、どれだけ幸せなことだろうかと思う。
摂理が曲がること、それは、適応しない私たちが不幸せになること。


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