デビュー作を読むのが、あまり好きではありません。
「この人は最初からこんなに書けたのか」と感嘆する一方で、絶対に、
「私にはこんなのは書けない」と思ってしまうからです。
勿論どんな小説家も、デビューする前に何十作と習作を書いているのだと頭では分かっているのですが。
「慟哭」@貫井徳郎
【あらすじ】(アマゾンより)
連続する幼女誘事件の捜査が難航し、窮地に立たされる捜査一課長。若手キャリアの課長を巡って警察内部に不協和音が生じ、マスコミは彼の私生活をすっぱ抜く。こうした状況にあって、事態は新しい局面を迎えるが……。人は耐えがたい悲しみに慟哭する――新興宗教や現代の家族愛を題材に内奥の痛切な叫びを描破した、鮮烈デビュー作。
【一言抜き出すなら】
腐敗臭が彼を現実に立ち戻らせた
【感想】
小説の世界はノンフィクションじゃない。
ノンフィクションの世界(この現実)には、どんな理由があったとしても(復讐でも恨みでも天罰でも)人を殺しちゃだめ、という常識があります。
でも、そんなに簡単に「だめだからやらない」と割り切れるものでもない。
だからこそ、殺人を犯す犯人の苦悩を描き、つい同情してしまう作品はたくさんあると思います。
殺すことはだめだけど、でもどうしても殺したい主人公の気持ちが分かってしまう話。
(前にレビューした、東野圭吾の「さまよう刃」はまさにそういう作品です)
けれど、この主人公はただの殺人犯じゃない。
連続幼女誘拐事件の犯人で、誘拐した幼女は全て殺してしまっています。
日本中を震撼させる非道な殺人犯であるこの男を、同情することはできるのか。
…できてしまいました。
人間、大概の一般の人から「変質者」と評されたり、「殺人犯」としてラインを踏み越えちゃうようなところには、案外簡単に行けるものかもしれません。
__⇒同じ作家の別の本
・「プリズム」@貫井徳郎
・「失踪症候群」@貫井徳郎
2010/06/21
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