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2010/06/29

「長い腕」@川崎草志

 こんにちは、そうるです。
 起きたらものすっごい雨が降っていてびっくりしたんですが、家を出るころには止んでました…梅雨の天気って気分屋すぎる。猫みたいだな、とふと思い、そう思えば可愛い気がしないこともない…かなぁと思いました。
 寒い冬は嫌いですが、じめじめする梅雨も嫌いです。海に行きたい!!

 さて、今日はちょっと異色作。
「長い腕」@川崎草志


【あらすじ】(アマゾンより)
超一級の傑作サスペンス、誕生! 第21回横溝正史ミステリ大賞受賞作!!
東京近郊のゲーム制作会社で起った転落死亡事故と、四国の田舎町で発生した女子中学生による猟銃射殺事件。一見無関係に思えた二つの事件には、驚くべき共通点が隠されていた…。

【一言抜き出すなら】
 自分の持ち物は、シートを外した車の助手席に入れられる限りと決めている。

【感想】
 さて、お母さんに借りた本を雑食に読む日々が続いているので、必然的にミステリばかりなのですが、別にそうるは謎解きやトリックにはあまり興味がありません。
 ただ、ミステリはどうしても犯人や被害者の心情、人間らしさを綺麗にも汚くも書かなければならない分野だと思うので、面白いなぁと感じて読んでいます。自分の感情の機微とか人間としての醜さなんて、普段は意識して言語化したりしないで過ごしてるわけですから。
 で、今回の「長い腕」は、川崎さんのデビュー作です。デビュー作らしく、ところどころ日本語が読みづらかったり、展開が不必要にだらけている感がありますが、そういう「洗練されていない部分」があるからこそ親しみが持てるし、次世代の作家が「俺も俺も!!」って意気込むんだろうなあと思います。
 そんな、親しみが持てるミステリ「長い腕」の主人公である汐路の人間らしさを、最も端的に表していると思われる一文が上に抜き出したものです。
 別に川崎さんを非難するつもりは無いのですが、
 ・所有物が少ない
 ・生活感がない
 ・帰属意識が薄い
 ・恋愛に無関心
 ・小さくて細い
 ・性格が淡泊
 な女性と言えば、ふととある有名アニメの登場人物を思いだすのは私だけでしょうか…
 そうでなくても、なんだかあまり感情移入の出来ない、造り物で浮世離れした雰囲気を持ったキャラであることは間違いありません。
 そもそもそうるは、持っているダブルベッドだけで既に普通の自家用車には入りませんし、「物の少ない生活」、「所属組織を転々とする生活」に憧れは感じますが、現実的にそんなことはとてもできません。
 架空のキャラクターなので別にどのような人物でもいいのですが、アニメのキャラクター張りに実在感の無い設定である汐路(おそらく好みか憧れか、デビュー作のキャラクターとしてこの汐路を選んだからには、川崎さんにとって特別な設定なのだと思いますが。そこで、川崎さんがゲーム会社出身の業界人であることを加味すると、思い込みによる差別的発言になってしまうとは思うんですけども)を、こんなにも現実世界にいるかのように書き、殺人事件に紛れ込ますことに成功した、というのはある意味で成功なのかな、と感じました。
 ただ、行動の動機や思考のパターンなんかが、どうしても共感できないモノになっているところは溜息を吐いて見逃すしかないかな、と思います。エンターテイメントとしては、充分に面白かったのですけども。
 




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