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2010/06/09

「楽園 上」@宮部みゆき

上下巻ものを久しぶりに読みました。
こんにちは、そうるです。

お母さんのお墨付きで読みだしたら、止まらなくなりました。
流石です。大家、という言葉を思い出しました。

「楽園 上」@宮部みゆき


【あらすじ(アマゾンより)】
未曾有の連続誘拐殺人事件(「模倣犯」事件)から9年。取材者として肉薄した前畑滋子は、未だ事件のダメージから立ち直れずにいた。そこに舞い込んだ、女性からの奇妙な依頼。12歳で亡くした息子、等が“超能力”を有していたのか、真実を知りたい、というのだ。かくして滋子の眼前に、16年前の少女殺人事件の光景が立ち現れた。

【一言抜き出すなら】
渡ってしまった。ルビコン河だ。

【感想】
まず、「ルビコン河」という単語を調べました。ウィキペディアで。
この単語は、作中突然登場したもので、何の脈絡もなく、けれど主人公の滋子が、滋子ににとって大きな意味のある一瞬に発したうめきでした。

中立の立場を守ろうとしていた。どっちに偏ってもいけないと思っていた。
あくまでそう求められており、自らもそうあろうとしていた。
けれど心の中では、こっちなんじゃないかという思いがむくむくと大きくなってきていて。
けれどいけない、そっちに流されちゃいけない、中立でなければならないと留まって。
そうこうしているうちに、何も考えずに感情が爆発した瞬間に、言ってしまった。
「私はこちらの味方をする。こっちが正しいと思う」と。

その時に渡ったのがルビコン河。
世界史の知識なんてものはそうるの頭の中から抜け落ちていて、
やっとこ知ったのは、紀元前のローマで、圧倒的な権威を誇っていた元老院の、
歴史と共にその威光が失墜した、その契機が「カエサルがルビコン河を渡ったこと」なんだということだ。
当時の権力関係も血筋も地理も何もかも疎くて、どうしてカエサルが河を渡ったくらいで元老院がなし崩しに弱くなってしまったのかはさっぱり分からないけれど、ともかく歴史的にとてつもなく大切な渡河だったということは分かった。
その後、一つの国の運命を左右させてしまうくらいには。

滋子は渡った。その後の人生を、事件の顛末を左右させてしまう契機を。だから、宮部みゆきは書いた。「ルビコン河を渡った」と。

話の内容は文句なくおもしろいし、ぐいぐい引き込まれる。けれど一番心に残ったのは、この「ルビコン河」だった。

そういう単語を、臆面なく、さらりと自然に使える人になりたい。
世間的にはちょっと間違っているかもしれないけれど、そうるにはそういう知識と使いどころの心得た人のことを、「教養がある人」というような気がする。


ついでに、この話は宮部みゆきの絶対的な代表作、「模倣犯」に繋がる話になっているわけだけれども(これだけ読んでも問題は無いけれど)。
そうるはせっかく模倣犯を読んだことがあるのに、この「楽園」を読んでも読んでもちっとも模倣犯の話の内容を思い出しませんでした。
もったいない。
すっごくおもしろかったことしか覚えてない。

そういう歯がみをしたくなるとやっぱり、こういう読書記録は付けておくべきだと痛感します。
あー頑張って続けよう。

…話の感想は下巻の折にでも。


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