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2010/09/09

「子どもたちは夜と遊ぶ(上)」@辻村深月

「子どもたちは夜と遊ぶ(上)」@辻村深月 (2008/05刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベース より)
大学受験間近の高校三年生が行方不明になった。家出か事件か。世間が騒ぐ中、木村浅葱だけはその真相を知っていた。「『i』はとてもうまくやった。さあ、次は、俺の番―」。姿の見えない『i』に会うために、ゲームを始める浅葱。孤独の闇に支配された子どもたちが招く事件は、さらなる悲劇を呼んでいく。


【一言抜き出すなら】
彼女を殺した犯人が、泣き出しそうな気持ちで彼女の首を絞めていたことを知らないだろう?

【感想】
「ぼくのメジャースプーン」、「冷たい校舎の時は止まる」を既読の上、3作品目です。
まだ上巻しか読んでいません。
今後のストーリー展開に関して、いくらか分かりやすい伏線は引かれているのでミステリとしては物足りなく、また、おどろおどろしい殺人現場のわりに、感情描写や情景描写が今一つで、『見立て殺人』、『情報クラッキング』、『小児虐待』などの旬のキーワードを散りばめている割に、社会派の薫りも薄い。
そういう意見を聞くこともありますが、そうるは、辻村先生の独特の空気感が好きでついつい読んでしまいます。
恩田陸ほど強烈ではないけれど、東野圭吾ほど分かりやすいわけでもない。
現実世界を舞台としているけれど、キャラ設定とかストーリー展開とか、どこかに少しだけ、なんとなくお伽噺的な要素が溶かされている感じ。

図書館で予約待ちなんです。早く下巻が読みたいよー

(88点.期待の高得点!!)


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2010/09/08

「今はもうない」@森博嗣 

「今はもうない」@森博嗣 (2001/03刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベース より)
避暑地にある別荘で、美人姉妹が隣り合わせた部屋で一人ずつ死体となって発見された。二つの部屋は、映写室と鑑賞室で、いずれも密室状態。遺体が発見されたときスクリーンには、まだ映画が…。おりしも嵐が襲い、電話さえ通じなくなる。S&Mシリーズナンバーワンに挙げる声も多い清冽な森ミステリィ。


【一言抜き出すなら】
言葉にはしなかったのではないかしら?

【感想】

驚いた…
森先生の作品(特にS&MとV)は頻繁に読んでいるので、犯人は当てられないまでも、たまげるようなラストが来ることもないだろうとたかをくくっていただけに、完全にしてやられました。
密室がどう、犯人がどう、動機がどう、などというミステリなら着目せざるをえないところをしっかり書きこみつつ、もっと小説として初歩的な、「読み物としての仕掛け」で騙された。
くそー、してやられた。

森ミステリィだな、って思う。
こうやって、「自分が物語を書いている」(語っているのではなくあくまで「書いている」)ことを客観的に自覚しながら書いていることが分かるからこそ、森先生の作品と作者の絶妙な距離感が堪らなく病みつきにさせるんだと思う。
それなりに小説を読んできた人だけが森先生にはまるのでは、と勝手に考察してみたり。

(88点.人生の一冊ではなくても珠玉の一冊。)


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2010/09/05

「バベルの薫り(上・下)」@野阿梓

「バベルの薫り(上・下)」@野阿梓(1995/06刊)
バベルの薫り〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)
バベルの薫り〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)
【あらすじ】(「BOOK」データベース より)
22世紀、スペース・コロニーと月面では、日本、アメリカ、ハノイ連邦とが覇権を競っていた。人工衛星都市ミマナの心霊科学研究所に勤務する稀代の霊能者・姉川孤悲は心霊コンピュータISMO 2の稼動に成功する。が、その時、日本列島の一点から異様な霊気が発せられるのを感知した。これを「国体」の危機とした日本政府は孤悲に全権を託し、少年・林譲次と共に疑惑の学園都市・井光へ派遣したのだが…近未来SF巨篇。


【一言抜き出すなら】
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【感想】
平日にちっとも読み進まなかったので、土日を利用してなんとか読み終わりました。
「疲れた…」というのが第一声。
SFというのは、どうしても読者はおいてきぼりになってしまうものなのかもしれませんが、このお話は、舞台設定中の技術や常識だけではなく、過去のものとして語られる現在(読んでいる私にとっての現在)や過去を語る時ですら、独りよがり的な解説と共にどんどんと私を置いていってしまうので、入り込むことができずにすぐに集中力が切れてしまいました。
そして、その置いてけぼり具合ばかりが目に付いてしまって、キャラの性格や魅力までなかなか思いやることができなかった…
結構な巨編なだけに残念です。
終わり方も、其処まで持って行く舞台の盛り上げ方も見事だと思っただけに、SFにこだわらなければ素敵な話が書けるのでは、といらぬお節介まで思ってみたり。
ともかく、上下一緒の感想です。(それだけ身が入っていないとも言う。。。)

(62点.孤悲、と書いて「こい」と読む主人公の名前は確かに魅力的。)




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2010/09/04

2010年8月のベストワン

 8月は、図書館からの拝借6冊でした。
 本当はもっと読んだのですが、例に漏れず更新し損ねたので、投稿月で計算することにして9月分に持ちこします!
下の本をベストワンに選びましたが、何気に「楊貴妃伝」も捨てがたかったです。中国史なんて全部忘れたのに、当時のロマンさも虚しさも全部ひっくるめて楊貴妃がとても素敵でした。
6冊しか読んでないことを考えたら、豊作な月だった… 

★2010年8月のベストワン★
「遥かなり神々の座」@谷甲州 (1995/4刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
マナスル登頂を目指す登山隊の隊長になってくれ、さもなくば―得体の知れない男から脅迫され、登山家の滝沢はやむなく仕事を請け負った。が、出発した登山隊はどこか不自然だった。実は彼らは偽装したチベット・ゲリラの部隊だったのだ。しかも部隊の全員が銃で武装している。彼らの真の目的は何なのか。厳寒のヒマラヤを舞台に展開する陰謀、裏切り、そして壮絶な逃避行―迫真の筆致で描く、山岳冒険小説の傑作。


【感想】
90点付けさせていただきました…
個人的には山登りもしないし、テロに詳しいわけでもないし、軍隊とか戦争ものの小説を好んで読むわけでもないのですが。

そういった、そうるというドシロートに対して、このお話は、山登り(それも地球で一番過酷なヒマラヤ登山)の魅力を文字だけで虜にするほど語ってくれました。
雪の白さ、山のつらさ、寒さ、そして山頂からの雲海の見事さ、陽の光の素晴らしさ…

そしてそれだけではなく、テロ組織に狙われた主人公の心を通して、命の大切さ、国という組織のとてつもない大ききと非道さを教えてくれました。

そして最後に、たったひとりの人間に、できることの大きさも。

人は、とてつもなくちっぽけで弱い。
けれど同時に、想像以上に強くて、たくましい。

息つく間もなく読んでいる間、幸せでした。


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「海猫(下)」@谷村志穂

「海猫(下)」@谷村志穂 (2004/08刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベース より)
広次と薫の恋は、壮絶な結末を迎えた。それから十八年後、薫の愛したふたりの娘は、美しい姉妹へと成長していた。美輝は北海道大学に入学し、正義感の強い修介と出会う。函館で祖母と暮す美哉は、愛してはいけない男への片想いに苦しむ。母は許されぬ恋にすべてを懸けた。翳を胸に宿して成長した娘たちもまた、運命の男を探し求めるのだった。女三代の愛を描く大河小説、完結篇。島清恋愛文学賞受賞作。


【一言抜き出すなら】
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【感想】
あっという間に衝撃の結末を迎えた薫の恋。

えっ?!と思っていたところに、その薫の決着が波紋を広げ、薫の母タミと、薫の二人の娘美輝と美哉に大きな影と影響を広げていく過程が丁寧に描かれていきます。

上巻ほどの、切羽詰まった恋愛とか、人を殺しかねないおどろおどろしさや、特定の人を決めてしまった狂気のようなものは感じられません。
けれど対照的に、3人の女たちが薫を鏡にしながら自分を省みつつ、それぞれの道を歩いていく姿に、「家族」というものを強く感じました。

自分は、どう歩くか。
悩みつつ、母や祖母の行く末を自分なりに消化して、その上で娘たちも自分の道を歩く。

普通、主人公の物語が終わってしまって、その後を描く話は尻すぼみ的な感じがするものですが、このお話は引き続き深く考えさせられるものがあり、恋愛から、自己や自我、女というものまで視野広く素敵な世界を見せていただきました。

ほんっとうに、ありがとうございました。

(95点.やはり、自分のことは自分しか決められない。)


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「海猫(上)」@谷村志穂

「海猫(上)」@谷村志穂 (2004/08刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベース より)
女は、冬の峠を越えて嫁いできた。華やかな函館から、昆布漁を営む南茅部へ。白雪のような美しさゆえ、周囲から孤立して生きてきた、薫。夫の邦一に身も心も包まれ、彼女は漁村に馴染んでゆく。だが、移ろう時の中で、荒ぶる夫とは対照的な義弟広次の、まっすぐな気持に惹かれてゆくのだった―。風雪に逆らうかのように、人びとは恋の炎にその身を焦がす。島清恋愛文学賞受賞作。


【一言抜き出すなら】
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【感想】
この人を好きになる。
この人と一生を生きて、この人の村に一緒に埋まって、私は私だけの故郷を作るのだ…

ロシアとの混血に生まれた薫の、その決意は確かに一世一代のもので、絶対に嘘ではなかった。薫は真面目な子だったし、女一人で漁村に嫁ぐ覚悟は生半可なものではない。

なのに。

その旦那のことを、薫は「愛して」はいないことを思い知らされる。

他の誰でもない、旦那の弟を「愛して」いる自分を知ってしまうから。

なんてこったー!! な話です。一昔前の北海道の漁村に、混血の女が嫁ぎに来るというビッグニュース。そして、その中で不貞を働くというスキャンダル。

気丈な薫が、最終的にどんな道を取るのか。薫の故郷はどこにあるのか。

下巻が楽しみすぎる話です。。。

(92点.波・乱・万・丈!)



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「BAD KIDS」@村山由佳

「BAD KIDS」@村山由佳 (1997/06刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベース より)
20歳も年上のカメラマンとの関係に苦悩する都は高校の写真部長。彼女が絶好の被写体と狙いをつけた隆之は、ラグビー部の同性のチームメイトに秘かな恋心を抱いていた。傷つき悩みながら、互いにいたわりあうふたり。やがて、それぞれに決断の時を迎える。愛に悩み、性に惑いながらもひたむきに生きる18歳の、等身大の青春像をみずみずしいタッチで描く長編小説。


【一言抜き出すなら】
挫折って、たとえばどんなふうにですか?

【感想】
高校生。
どんな道でも選べるとき。
どの道が正しいのか分からない時。

なんだかうまく感想が言えませんが、何を選んでも、外から見ただけでは、それを良いとも悪いとも絶対に決めつけられないのだ、ということを改めて教えられました。

「そんな道を選ぶんじゃない。必ず失敗して、とんでもない挫折を味わうことになる。そうなってしまった生徒を先生は何人も見てきたんだ」
みたいなことを言われた後の、都の返しが最高にかっこいい。

「挫折って、たとえばどんなふうにですか? 詳しく教えていただかないと、なにしろ私は未熟なので分からないんです」

知らないことは、悪いことじゃない。精一杯やることが、自分の持てるものを信じて我武者羅になることが、なにより大切なのだ!!!

(85点.あたたかい話だった。)


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「翼 cry for the moon」@村山由佳

「翼 cry for the moon」@村山由佳 (2002/06刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベース より)
父の自殺、学校での苛め、母には徹底的に拒まれて…。N.Y.大学の学生、篠崎真冬は心に深い傷を抱えて生きてきた。恋人、ラリーの幼い息子ティムも、実の母親から虐待を受けて育った子供だった。自分の居場所を求めて模索し幸せを掴みかけたその時、真冬にさらなる過酷な運命が襲いかかる。舞台は広大なアリゾナの地へ。傷ついた魂は再び羽ばたくことができるのか。自由と再生を求める感動長編。


【一言抜き出すなら】
こんなふうに考えること自体が傲慢さとすれすれだという気がするからだ。

【感想】
これでもか、これでもか、と不幸が訪れる主人公、真冬。
その中で、ぐれず、真摯に、真面目に、なんとしてでも自力で全てを超えて、自分だけの安らぎの地を見つけようとする物語です。

こんなに不幸に見舞われるのは絶対にイヤだけど、その中で、こういう風に生きていけたらいいなぁと思う、真冬は私の一つの理想の形です。

必死に生きるって大切だよなあと思う。こういう話を読むたびに。
適当に生きているつもりは無いけれど、でもこういう物語の主人公みたいに必死に生きているかと聞かれたら、絶対に答えはNOだ。

(87点.こうやって人を大切にする人になりたい。)


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「マンゴー・レイン」@馳 星周

「マンゴー・レイン」@馳 星周 (2003/11刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベース より)
タイ生まれの日本人、十河将人。彼はバンコクで再会した幼馴染から、中国人の女をシンガポールに連れ出す仕事を引き受ける。法外な報酬に、簡単な仕事。おいしい話の筈だった。だが、その女と接触した途端、何者かの襲撃を受け始める。どうやら女が持つ仏像に秘密が隠されているらしい―。張り巡らされた無数の罠、交錯する愛憎。神の都バンコクで出会った男と女の行き着く果ては。至高のアジアン・ノワール。


【一言抜き出すなら】
七十年以上生きてきたが、これだけ振り回されたのはわたしも初めてだ。明日のない者のやけっぱちの活力を過小評価したせいかな。

【感想】
タイのバンコクには一回だけ行ったことがありますが、このお話の舞台になるような、魅力的な街だとは知りませんでした。
暴力と嘘と貧困と差別とクスリと性に満ちた場所。
その中から、なんとしてでも逃げ出してやろうとする美人娼婦がものすごい存在感を放っています。彼女が主人公でしょ!って感じ。

恋とか愛に似たものが何度も駆け巡るのに、結局何よりも、彼女が欲しかったのは未来と自由で。こんなにも自分を憂い、未来を欲し、富を夢見るのは人間の性なんかなって思いました。
最後の最後に、全員裏切ったしな…

(85点.女ってこわい!)


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「魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge」@森博嗣

「魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge」@森博嗣 (2003/11刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベース より)
アクロバット飛行中の二人乗り航空機。高空に浮ぶその完全密室で起こった殺人。エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣をめぐって、会場を訪れた保呂草と無料招待券につられた阿漕荘の面々は不可思議な事件に巻き込まれてしまう。悲劇の宝剣と最高難度の密室トリックの謎を瀬在丸紅子が鮮やかに触き明かす。


【一言抜き出すなら】
私が影響を与えたもの。私が影響を受けるものではありません。

【感想】
森さんです。著作が多すぎて、まったく読破できる気がしません。
 S&MシリーズもVシリーズもそうなんですが、私、刊行順に読んでいないので、登場人物の距離感が毎回毎回違うので戸惑います。なんだかんだ言って、メインとなる登場人物の心理的距離も巧く描いているんだなあとしみじみします。
 もう少し読んだら、全著作リストを引っ張り出してきて、どれくらい読んだか印をつけたいです。

 さて、今作から抜き出した一言は、母が娘を評して、また一人の女が自分の絵画作品を評した言葉です。
 強く強くあらなければ生きていけない不遇の身だとしても(自分はそんなこと思っていないでしょうけれど)、けれど自分の周りを見てそう言いきれてしまうのは、強さより寂しさなんじゃないかと思いました。
 もうこの世に、自分を変えられるものは何もない寂しさ。

 …想像もできませんけれど。

(83点.いつも新しい発見をくれる人)


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「太陽の塔」@森見 登美彦 

「太陽の塔」@森見 登美彦 (2006/05刊)
【あらすじ】(アマゾン より)
京大5回生の森本は「研究」と称して自分を振った女の子の後を日々つけ回していた。男臭い妄想の世界にどっぷりとつかった彼は、カップルを憎悪する女っ気のない友人たちとクリスマス打倒を目指しておかしな計画を立てるのだが…。


【一言抜き出すなら】
ダメだ。三次元だぜ。立体的すぎる。生きてる。しかも動いてる。

【感想】
森見さんの作品を初めて読みました。クセのある方だとは伺っていましたが、まさかここまでとは思いませんでした。。。
別に自分には合わないとは思いませんでした。
こんな風に分かりやすく、愛らしい形でなくとも、異性を苦手と感じてしまう人はたくさんいるのでは、と思います。

でも、主人公たちの考え方、ポジショニング、内面の吐露の描写があまりに多くて、物語の進行という面では遅々としていたため、多少疲れてしまいました。
内面の吐露こそが、この物語の醍醐味だと、分かってはいるつもりなのですが。。。

(62点.カルチャーショック!!)



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