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2012/06/29

「天使の眠り」@岸田るり子

「天使の眠り」@岸田るり子 (2010/7刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベース より)
京都の医大に勤める秋沢宗一は、同僚の結婚披露宴で偶然、十三年前の恋人・亜木帆一二三に出会う。不思議なことに彼女は、未だ二十代の若さと美貌を持つ別人となっていた。昔の激しい恋情が甦った秋沢は、女の周辺を探るうち驚くべき事実を掴む。彼女を愛した男たちが、次々と謎の死を遂げていたのだ…。気鋭が放つ、サスペンス・ミステリー。


【一言抜き出すなら】
イアンは一二三にとって神であり、その熱狂的な信仰が、今日まで生きる支えになってきたのだ

【感想】
一緒にいて楽しくて、頭が良くて、ユーモアに溢れていて、容姿がかっこよい最高のだんな様がいて。
彼が突然、「難病だから」という理由だけでひとつも抗う術が無く死んでしまったとしたら。
いなくなってしまったその男のことを、神か何かのように思えるものだろうか。
そしてその男と自分の間に生まれた娘のことを、他の誰よりも優れた、生き残るべき人間だと妄信するだろうか。

結婚しても無い。母になったことも無い。
でも、世間に良く聞く「母性」と「女」の性質を組み合わせたら、無いことも無い話だと思える。

人は誰でも平等であるかもしれない。
誰かを生かすために、誰かを殺してはいけないかもしれない。

でもきっと、母親たちは自分のたった一人の娘のために、誰か他人を殺すことが出来ると思う。

 

 
(68点.最後がちょっと消化不良。)


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「エ・アロール それがどうしたの」@渡辺淳一

「エ・アロール それがどうしたの」@渡辺淳一 (2006/4刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベース より)
東京・銀座の瀟洒な施設「ヴィラ・エ・アロール」。「エ・アロール」とは、フランス語で「それがどうしたの」という意味。そこの経営者である来栖の「仕事や世間から解放された人々に、楽しく気ままに暮らしてもらおう」という方針から、施設には自由な雰囲気が溢れ、三角関係などの恋愛問題が絶えず起きるが…。「老い」の既成概念を打ち壊し、新たな生き方を示唆する衝撃作。


【一言抜き出すなら】
死ぬまでに一度、貴方に抱かれたい

【感想】
たとえば75才の、かわいらしいおしゃれなおばあちゃんがいて。
だんなさんは、10年くらい前に病気か何かで死んでしまっていて。
一人で、お友達とおしゃべりとか、趣味をしたりとか、孫と遊んだりしている日常の中で。
もう一回恋をしたらどうなってしまうのだろう。
既に、一人の男の人と人生の大半を歩いてしまった後、残り少ない時間で、人に恋してしまったら。

私なら、その思いをどうするだろう。
こんな年になってみっともないと、胸に隠すことが出来るだろうか。

残り少ない人生だからこそ。
どうなってでも隠すよりは良いと、ぶちまけてしまうのではないだろうか。
 

 
(75点.リアルに読むには、まだちょっと早かった。)


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2012/06/22

「麻酔」@渡辺淳一

「麻酔」@渡辺淳一 (1996/8刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベース より)
子宮筋腫の手術を受けた妻邦子は、麻酔のミスで意識不明のまま眠り続ける。福士高伸は妻の意識が戻るよう、夜の病床で妻を密かに愛撫さえしたが、いっこうに目醒める気配もない。母のいなくなった家庭は次第に虚ろなものになっていくが、高伸は仕事に没頭していく。医療過誤と家族の絆を描く感動の長編。


【一言抜き出すなら】
おまえがもう疲れたというのに、どうしても生きろ、というわけにもいかないだろう

【感想】
有名な作家だというのは分かっていましたが。 私にとって初の渡辺淳一でした。 最初から最後まで一言も喋らない、妻であり母であり、家族の要である人。そして、善良で腕もあってベテランの医者の、ちょっとした油断と過信から起きた医療事故。 誰も悪くない、でも誰もが悲しい。 いたたまれないお話で確かにとても面白く泣きそうになりましたが、あまりに誰も悪く無さ過ぎて、逆に綺麗に見えてしまいました。  

 
(78点.現実は、もっとどろどろとしてると思うんだ。)


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2012/06/20

「鎮魂歌」@馳星周

「鎮魂歌」@馳星周 (2000/10刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベース より)
新宿の街を震撼させたチャイナマフィア同士の銃撃事件から二年、警察の手すら届かない歌舞伎町の中国系裏社会を牛耳るのは、北京の崔虎、上海の朱宏、そして、銃撃事件で大金を手に入れた台湾の楊偉民だった。勢力図も安定したかと思われた矢先、崔虎の手下の大物幹部が狙撃され、歌舞伎町は再び不穏な空気に包まれた!崔虎は日本人の元刑事に犯人を探し出すよう命じるが、事態は思わぬ方向へと展開していく…。事件の混乱に乗じ、劉健一は生き残りを賭け、再び罠を仕掛けた!―驚異のデビュー作『不夜城』の二年後を描いた、傑作ロマンノワール。


【一言抜き出すなら】
怒りが消えた。深い悲しみが滝沢の全身を襲った。

【感想】
前作の方が面白かったかな、というのが最初の感想。 でも、あえて違う男が主人公で、前作の主人公に良いように弄ばれていて、彼からすれば前作の主人公が何を考えているのか全然分からなくて。 でも、前作を読んだからこそ、前主人公の描写が少なくたって、 彼のポーカーフェイスも、焦りも、復讐の想いも、他に生きがいが見つけられない焦燥も、結局何も変わらないという怒りも、ふつふつと伝わってきます。 そして、丁寧に描かれている今作の主人公の心理描写もあって、相変わらず新宿はいろいろなマフィアがごった返しにたむろしていて。 読み応えは十分にありました。  

 
(76点.積年の思いを叶える瞬間に、笑えないって悲しい。)


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2012/06/12

「アミダサマ」@沼田まほかる

「アミダサマ」@沼田まほかる (2011/11刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベース より)
幼子の名はミハル。産廃処理場に放置された冷蔵庫から発見された、物言わぬ美少女。彼女が寺に身を寄せるようになってから、集落には凶事が発生し、邪気に蝕まれていく。猫の死。そして愛する母の死。冥界に旅立つ者を引き止めるため、ミハルは祈る。「アミダサマ!」―。その夜、愛し愛された者が少女に導かれ、交錯する。恐怖と感動が一度に押し寄せる、ホラーサスペンスの傑作。


【一言抜き出すなら】
何も考えてはいけない。何も考えてはいけないと考えてもいけない。

【感想】
仏様と神様と得体の知れないなにか(テレパシー?)が折り合う不思議な世界。
最後の解説でこの物語そのものが曼荼羅だとありましたが、本当にそんな感じ。
根拠はよく分からなくて、支離滅裂で、救いが無くて、南無阿弥陀仏を唱えても何も起こらない。
その中で、唯一無二の神様のような少女ミハルも、実は我侭なだけの幼女に過ぎないのかもしれない。
人間はみんな我侭で、利己的で、寂しくて、でも排他的で。

そんな、どうしようもない人たちと神様のお話。  

 
(70点.思いの強さって、いつか計れるようになるのだろうか)


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2012/06/11

「不夜城」@馳星周

「不夜城」@馳星周 (1998/04刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベース より)
新宿・アンダーグラウンドを克明に描いた気鋭のデビュー作!おれは誰も信じない。女も、同胞も、親さえも…。バンコク・マニラ、香港、そして新宿―。アジアの大歓楽街に成長した歌舞伎町で、迎合と裏切りを繰り返す男と女。見えない派閥と差別のなかで、アンダーグラウンドでしか生きられない人間たちを綴った衝撃のクライム・ノベル。
第18回(1997年) 吉川英治文学新人賞受賞


【一言抜き出すなら】
影は、初恋の相手にプレゼントを渡そうとしている女の子のように、胸の前でしっかりと銃を構えていた。

【感想】
歌舞伎町は、日本の中にある日本じゃない場所。日本の法律も、人間の道徳も通じないサバンナである、というような記述がどこかこの本の中にありました。
こんな分厚い小説を読むような一般的な日本人じゃ絶対に全く触れないような台湾や上海や北京のヤバイヤツラの抗争を書いたお話しです。
そういった命の危険とか、身内の裏切りとかいったものに常に囲まれて生きている主人公(男)が、彼独特の考え方で生き延びようとし、女の人を愛そうとし、そしてお金を儲けようとする話。

堅気では絶対に無い話。でも、これくらい念には念を入れて、自分はどこかでドジを踏んでいるのではないかと繰り返し計画を練り直し、誰が信頼できるのかを客観的に考える。

そんなことが、今よりもう少しできるようになりたいとも思いました。

無条件に人を信じられる人生のほうが、幸せには間違いないんだろうけれど。
 

 
(82点.私の中で、アジアを書かせたらNo1なのはこの馳さんです)


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