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2010/08/21

「水の中のふたつの月」@乃南アサ

「水の中のふたつの月」@乃南アサ (1996/9刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
「忙しい」が口癖のOL亜理子は、幼なじみの恵美から十数年ぶりに電話をもらった。梨紗も誘ってかつての仲良し三人組で会おうと言う。突然の電話に不審を抱きつつ、彼女の心は夢のようなあの夏の日に溯っていった。心の奥底へと封印した、妖しい記憶の中へと―。ありふれた生活、時おり見せる特異な性癖。ありふれた彼女たちの表情の裏に見え隠れする、共通の秘密とは?深層に横たわる恐ろしい原体験が日常に染み出す様を描いた、衝撃のサイコ・サスペンス。


【一言抜き出すなら】
少女たちは、生まれて初めて妖怪の実物を見たと思った

【感想】
自分は正常だって120%言いきれるかどうか。
自分の執着心とか、性癖とか、恐怖体験をもう一度思い返して、自分の部屋をぐるりと見渡して。
自分は、120%正常だって言いきれるか。

そうるは、自分は正常だって信じてるけど、言いきれない。
小さな、「自分しかしらないこと」「周りに例を見たことない自分だけの小さな実例」を感じる度に、あれ?と思ってしまう。

そんなの、
・小さい時、テレビで宇宙人(想像図)が出る度に怖くて2時間泣き続けたこと
とか、
・歴史上の人物の名前はちっとも覚えられないのに、友達の中では一番、マンガの登場人物と作者に詳しかったこと
とか、
・キスするより「好きだ」って言うより、エッチする方が気が楽だったりすること
とか、
いろいろ本当にしょーもないどうでもいいことなんだけど。

しょーもない、って笑って片づけないで、私一人くらいは、それは大事な私の一部で、「正常」かどうかで測らないで、正面から考えてみないといけない。
そうしないと、この話みたいに、「正常」だと思い込んでいた「ちょっと変わった部分」が3人分寄り集まった時に、とんでもないことをしでかしても気づかなかったりするかもしれない。

(70点.共感しそこねたけど、ちょっと怖かった)



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2010/08/15

「夜明けまで1マイル」@村山由佳

「夜明けまで1マイル」@村山由佳 (2005/1刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
教授と学生。これはフリンなんかじゃない、恋だ。僕らの青春は、ちぎれそうだが、真っ直ぐ走るしかない…。僕たちそれぞれ、忘れられない恋!最新青春恋愛小説。


【一言抜き出すなら】
自分に居留守を使う

【感想】
若い時。まだ働いていない大学生の時。
自分が何になるかまだ決まっていなくて、「アーティスト」になることをほんのり夢見ている時。
アーティストじゃなくても、画家でも作家でも俳優でも、一般的に言う「就職」とは別の道を夢見ていたことがある人は多いんじゃないかと思う。
そうるも、一時「作家になりたいなあ」って思っていたこともあったし、投稿まがいのことをしていた時もあった。
その時の、夢と恋愛の両立とか、仲間との関係とか、心と感情の居場所なんかを懐かしく思い出させてくれるお話でした。
どんなことだって自分の糧になる時期だからこそ、「自分に居留守を使う」ことだけはしてはいけない。
たしかになあ、と納得しつつ、若いなあ、と感心しつつ。


(75点.思い出にしてしまわないで、もう一度頑張りたいとも思いつつ)




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2010/08/03

「遥かなり神々の座」@谷甲州

「遥かなり神々の座」@谷甲州 (1995/4刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
マナスル登頂を目指す登山隊の隊長になってくれ、さもなくば―得体の知れない男から脅迫され、登山家の滝沢はやむなく仕事を請け負った。が、出発した登山隊はどこか不自然だった。実は彼らは偽装したチベット・ゲリラの部隊だったのだ。しかも部隊の全員が銃で武装している。彼らの真の目的は何なのか。厳寒のヒマラヤを舞台に展開する陰謀、裏切り、そして壮絶な逃避行―迫真の筆致で描く、山岳冒険小説の傑作。


【一言抜き出すなら】
少しくらい離れていても、ニマの存在は嗅覚でわかった。

【感想】
 せっかく図書館でなんでも借り放題なので、「買う」「借りる」ではまず手を出さないような本を借りてみました。
 でも、なんとなく裏表紙のあらすじを読んで、惹かれるものがあったんですが。

 いや、勘はアタリでした! おもしろかった!

 登山のことは何も分かりませんし、
 ヒマラヤ周辺のネパールの中国やインドの紛争のことなんて、報道されている以下の殆ど無知の状態ですが。

 そんなことは関係なしに、猛吹雪の7000メートルの高さで身体が宙に投げ出される恐怖、
 夕陽に照らしだされる連邦の神々しく雄々しい姿が、目の前に浮かび上がるようでした。

 またそれとは別に、そのあたりの民族の紛争のむごたらしさ、人を殺すあっけなさ、人一人が生き抜くというそれだけのための苦労と獣じみた逃避行のリアルさ。
 
 いや、これはまるっきし日本じゃない。日本人が書いたもんじゃないよ、と思いつつ、でも訳書ではなく、日本語の表現のすばらしさを感じながら読めて本当に幸せでした。

嘘偽りなく、「傑作」だと思います!!

(90点。人が生きるってすごいことだ)





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「楊貴妃伝」@井上靖

「楊貴妃伝」@井上靖 (2004/8刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
「在天願作比翼鳥 在地願為連理枝」白居易の傑作「長恨歌」に歌われた玄宗皇帝と愛妃・楊貴妃。寵愛をほしいままにし、権力さえも手中にした貴妃の波瀾に満ちた短い生涯。時が移っても、変わらぬ人間の業を絢爛な絵巻のごとく流麗に描き出す。唐代の壮大な叙事詩にして、今なお熱く胸を打つ傑作長編小説。


【一言抜き出すなら】
運命

【感想】
 歴史小説ってジャンルを久しぶりに読みました。
 いや、すごいおもしろかった!
 難しい漢字の名前も、「また」を「亦」と書くややこしい表記も、
 まったくもって忘れてる唐代の中国史も、
 当然知らない当時の勢力図も。

 いろいろ心配点はあったんですが、全然気にならなかった!

 楊貴妃の心の移り変わりがすごく自然で、夫の父(義父)に嫁ぐ心持も、30以上も離れた玄宗皇帝への思いも、後宮の寵争いも、その中での楊貴妃の魅力も、わかりやすかった!
 …そりゃー玄宗もめろっめろですよ。素で男の扱い方を分かっているとしか思えない(笑)

 そしてそんな恋愛模様を描きつつ、唐が滅亡して安録山に裏切られて、玄宗が都落ちして楊貴妃が殺されるまでが一気に息つく間もなくハイテンポで分かりやすく描かれていて、楊貴妃の気持ちも分かりやすいし歴史ロマンも充分に感じられるし、改めて小説っていうか文字ってすごいなぁと思いました。

 何が伝えたかったって、言葉一言とかひとつのシーンとかじゃなくて、この時代の空気なんじゃないかと思いました。それこそロマンだ…
 

(88点。目からウロコ!!)





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「夜のピクニック」@恩田陸

「夜のピクニック」@恩田陸 (2006/9刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために―。学校生活の思い出や卒業後の夢などを語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。


【一言抜き出すなら】
ぐちゃぐちゃ

【感想】
 青春はぐちゃぐちゃしているべき。
 毎日学校に行って。狭い人間関係に一喜一憂して。
 でも、それももうすぐ終わり。すぐに受験が来て、高校3年生の自分たちは、これから誰一人同じ道を歩むことなく散り散りになっていく。
 
 もし、高校最後に、これまでの「青春」の全てを精算できるイベントがあるとしたら、どうするだろう。
 そして、そのイベントはどんな形をしているのだろう。

 そうるは、そのイベントこそが、この「夜のピクニック」だと思う。私もこういうことがしたかった。もしあったら、この物語の子たちみたいに不平不満を垂らしながら、それでもサボることなく、大切な友達と歩くのだろうと思う。
 疲れて疲れて疲れ切って、恥も言い辛さも見栄も何もかも捨てて、素の会話ができるんじゃないかと思う。

 そしてその記憶を、青春の大切な思い出として、大きくなって酒の肴にするんだと思う。

 いいなぁ。

 だって、主人公だけじゃなく、殆ど全ての登場人物たちが、このイベントで青春を精算すべく、様々な形でもがいているんだもの。

(88点。憧憬って言葉が浮かぶ所が年だなー)






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「黒猫の三角」@森博嗣

「黒猫の三角」@森博嗣 (2002/7刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベースより)
一年に一度決まったルールの元で起こる殺人。今年のターゲットなのか、六月六日、四十四歳になる小田原静子に脅迫めいた手紙が届いた。探偵・保呂草は依頼を受け「阿漕荘」に住む面々と桜鳴六画邸を監視するが、衆人環視の密室で静子は殺されてしまう。森博嗣の新境地を拓くVシリーズ第一作、待望の文庫化。


【一言抜き出すなら】
テストで、わざと間違えたことがありますか?

【感想】
 森さん自身がどれだけ頭がいいのかは分からないけれど、森さんは本当に「頭がいい人」を書くのがうまいと思う。それも、ただ頭がいいだけではなくて、「覚えること」「応用すること」「閃くこと」に秀でた、正真正銘、頭の回転が速い、ものすごく頭がいい人を描くのがうまいと思う。
 Vシリーズと呼ばれる、紅子さんのシリーズ第一作。最後の方、あれあれっと思いこみが覆されて、全然予想外の人が犯人だった時は本当に驚いた。あれ、この人は探偵側で、客観側で、第三者なんじゃなかったっけ…?という騙された気分。

 でもそれも全て、「頭のいい人にとっての、それ故の、多少ばかり常識から外れた善」というものを書きたいがためだと思う。
 そして、この傾向はずっと今の森さんにも続いているんじゃないかな。

 頭がいいからこそ、常人では見落としがちな犯人のミスに気づく。
 頭がいいからこそ、常人では気づかない動機やトリックに気づく。

 そして頭がいいからこそ、常人ではできないことができる。

 こう書くと、言いすぎているのかもしれないけど。

(82点。平均的におもしろい)





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2010年7月のベストワン

7月に読んだ本…12冊

●内訳
知人から借りる…4冊
図書館…8冊

でした。
もう2冊くらい読んだ気もするけど、もう思い出せないので、飛ばすなり8月に繰り越すなりします。
通勤時間を主体に読んでいるわりにはいいペース★

8月からは職が変わり、暫く帰りも早いので、もっとペースが上がるかもしれません。
(上げたいとは思いますが、お盆もあるので分かりません!)


☆★2010年7月のベストワン!★☆

「海を抱く –Bad Kids-」@村山由佳
>

85点より高い点数や同じくらいの点数付けた本もあった気がしますが、姉妹本が読みたくなったという点で(そして現在図書館に予約しているという点で)今一番心に残っている本。

ちょっとした思春期の心や体の変化が、この本の登場人物ほどではないにしろ、もしかしたら自分だけなんじゃないかと思って恐ろしくなった夜、またこれから自分がどんな大人になるのかさっぱり分からなくなって、いつか見渡す日々の景色が一変して「日常ががらりと変わる日」が来るんじゃないかと漠然と思っていた頃。

そんなことを思い出しました。

まあ現実には、どの分岐点も自分で悩んで選んで進んできたものなので、気づいたら愕然とするほど驚いた場所には立っていないつもりなんですけどね。


85点!(あたたかい話だったなぁ)

そういえば、7月は森博嗣の「四季」を一通り再読したので、4冊追加です。
でもなんか、再読や自分の所持本の感想を今更書く気になれません…
またそのうち気が向いたら書きますー



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