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2011/08/06

「ロミオとロミオは永遠に」@恩田陸

「ロミオとロミオは永遠に」@恩田陸 (2006/07刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベース より)
日本人だけが地球に居残り、膨大な化学物質や産業廃棄物の処理に従事する近未来。エリートへの道は唯一、「大東京学園」の卒業総代になることであった。しかし、苛酷な入学試験レースをくぐりぬけたアキラとシゲルを待ち受けていたのは、前世紀サブカルチャーの歪んだ遺物と、閉ざされた未来への絶望が支配するキャンパスだった。やがて最下級の「新宿」クラスと接触したアキラは、学園の驚くべき秘密を目にするが…。


【一言抜き出すなら】
よおし、儲けてやる。買いまくって、消費しまくってやるぞっ

【感想】
 大好きな作品なので2度目です。
 一回目はただただ20世紀カルチャーそのものをここまで料理した恩田さんに敬服するばかりだったのですが、今回読み返してみて、カルチャーだけではなく、其処に日本の立ち位置も含まれていて驚きました。
 日本は、自分だけで自分の価値を測ることができずに、他国よりどう優れているか、他国のどこを真似すべきかだけ考えてきたから、地球に日本だけ取り残されてしまったこの作品内の日本は、狂うしか方法か無かったのだな、と分かりました。
 私は相対評価最後の世代です。結局狭き門をくぐる為には相対評価されるのだから、絶対評価など何の役に立つのだとさんざん言い合ってきましたが、いざ社会人になってみると、元カレと今の彼氏を比べる、前の会社と今の会社を比べる、友達の女の子たちを比べる、なんともイヤな人間になってしまったなあと思う次第です。
 自分は、誰を評価するのか。その評価はその人を見て行うものであって、比べるべき他者の評価が上がったり下がったりしたからといって、当該人に対する評価が変わるのはおかしい。
 そんな簡単なことが、やっと分かった気がしました。
 
(95点.恩田さんの作品の中でも特に好きです)


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「テンペスト」@池上永一

「テンペスト」@池上永一 (2008/08刊)
【あらすじ】(「BOOK」データベース より)
珊瑚礁王国の美少女・真鶴は性を偽り、宦官になる―。前人未踏のノンストップ人生劇場。


【一言抜き出すなら】
それが世変わりだ。でも朝薫には耐えられない。

【感想】
 ストーリーはものすごくおもしろかったです。沖縄の激動の時代を、一人の少女の激動の人生に準えて分かりやすく追うことができます。
 またこの少女(真鶴)がバカみたいに頭良く、アホみたいに美しく、ありえないほどに性格が良いのですが、運が悪かったり能力がありすぎたり許されない恋だったりしてなかなか幸せになれないので、そんなに僻むようなキャラでもなく、とてもはらはらどきどきと上下巻一気に読むことができました。
 ただ、読みやすさ重視なのかものすごくかるいタッチの文体で書かれている所為で、どうにも緊迫感が伝わらなかったり、後宮や文化の荘厳さや華々しさが伝わってこなくて、もったいないと感じました。
 ストーリーの波乱万丈さはすごいのですが、読み味がどうにもラノベみたいになってしまっていて残念です。

(75点.でも一気読み)

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